No.85 人形操作の7癖

「神である主はこれらの骨にこう言う。見よ。わたしがおまえたちに息を吹き入れるので、おまえたちは生き返る。

(エゼキエル書37章5節)

 昔からのことわざに「無くて七癖あって四十八癖」というのがありますが、みなさんご存知だと思います。あまり癖のないと思われる人でも、よく見ると七つほど、さまざまな癖があるという意味ですが、さて、これをどう解釈すべきでしょうか。人はそれぞれ癖があって当たり前だから、あまり気にすることはない、ということでしょうか。それとも、他人の癖が気になって仕方がないので、なんとか直してもらおうと考えるべきでしょうか。
 こと腹話術に関していえば、これは決して見過ごしにはできないものです。というのは、人形操作という点において、多くの人が気付かずに陥っている癖があり、それが、人形の動きをぎこちなくさせ、いわば「いのち」のない「枯れた骨」のような状態にしていると言えるからです。
 そこで、今回は、人形操作で陥りやすい7つの癖について考えてみます。お互いに気づいたら、愛をもって指摘し合いましょう。

(1)頭が全く動かない。

 人形の動きには「動かない動き」という操作法もあり、この場合は、あえて動きを止めているので、操作している手には、止める力が入っていますから、人形の頭は生きています。ところが、多くの場合、術者がただ頭部に手を入れているだけで、動かすことに気持ちが入っていません。従って、頭(顔とも言えますが)は上下左右、どちらにも動かず、ただ台詞を言う時に、口をパクパクさせるだけ、ということになります。こういう状態では、顔の表情も死んでしまいます。

(2)頭が右斜傾だけになる。

 これは、術者が右手を使って、人形の顔を内側に向けようとする時、どうしても時計回りにひねってしまうことによって起こります。それは右手首を右外側に回すことがむずかしいからです。それでも、あえて、頭を平らに保ち、左右に動かす訓練が必要です。

(3)ボディーの背中が丸くなる。

 人形を人間に例えれば、背筋がまっすぐではなく、猫背になるということです。これは、人形の頭に入れた手首でしっかり頭を支えられていない時に起こります。そうすると、観客からは、人形が縮んだ形になり、技も小さく見えてしまいます。術者も人形も背筋をしっかり伸ばしましょう。

(4)左手ばかり動かす。

 術者の右側に人形を持つ場合、どうしても術者に近い人形の左手ばかり動かすことになります。術者の左手で、人形の右手を操作するというのは、人形のボディーを横切ることになるので、抵抗があるのでしょう。しかし、観ている側からすると、それほど気にならないものです。むしろ、人形の右手が全く動かない方が不自然です。

(5)足がほとんど動かない。

 術者は人形操作というと、つい頭と手ばかりに気が向いてしまいますが、スタンドから人形の足が、ただぶらさがっているだけということにならないようにしたいものです。片足や両足をぶらぶらさせたり、足を組んだり、時には、スタンドの上に立ったり、正座したり、色々な動きを考えましょう。

(6)術者との距離が変わらない。

 スタンドの上に人形を置く場合、特に術者との距離が全く変わらず、立ったままということが多いものです。その場合は、術者が人形に近寄るとか、人形が術者に寄りかかるとか、演出によっては、術者が人形を抱き上げて、スタンドから離すこともあります。

(7)スタンドに執着してしまう。

 かつては、腹話術は術者が椅子に座って、片膝を組み、その上に人形を置くというスタイルがほとんどでしたが、最近はスタンドを使うようになり、いつでもどこでも、スタンドになってしまいました。しかし、会場によっては、椅子に座る方が良い場合もありますから、臨機応変に対応しましょう。

2023年7月28日