No.29 なぜ人形(パペット)を使うのか①
- 腹話術の効果 -
「ひとりのみどりごが、私たちのために生まれる。ひとりの男の子が、私たちに与えられる。主権はその肩にあり、その名は『不思議な助言者、力ある神、永遠の父、平和の君』と呼ばれる。」
イザヤ書9章6節
先日、あるCS教師研修会で、こんな質問を受けました。「腹話術でもメッセージを語ることが大切と言われましたが、それならば、なぜあえて人形を使うのですか?」すなわち、メッセージならば、聖書片手で話せば良いではないか、ということだと思います。これはとても重要なポイントをついた質問だと思いました。メッセージを語るために、腹話術がどのような効果があるか、という問題なのです。実際のところ、腹話術を使っても特に効果がないならば、私たちがメッセージのために人形を使う意味はありませんし、普通の語り以上に労力をかけて備えることは虚しくなります。そこで、今回は、メッセージを伝えるために、腹話術を使うとどんな効果があるかについて、具体的に考えてみましょう。
(1)視聴覚教材として
皆さんは、腹話術を「芸」だと学びましたか?それとも「芸術」ですか?実はそのような捉え方は、メッセージを伝えようとする時には、ほとんど意味がありません。腹話術はあくまでも神様からの賜物であり、神に仕えるために用いられる技術なのです。一言で言えば「視聴覚教材」として位置づけることが一番ふさわしいでしょう。人々にみことばを伝えるために、素話だけでなく、絵を見せたり、実物を使ったりすると、大変わかりやすくなりますが、腹話術の場合は、人形との会話というスタイルで、みことばをかみ砕いて話すことができますから、特別な教育的ツールとなります。それに、人形が話しますから、まずは大変興味を引きますし、楽しさ、おもしろさもあり、人々が心を開いて耳を傾けることができるのです。大の大人でも「やぁ~人形だぁ」と思った途端、“油断”します。この点が重要なのです。その油断した心に真理をポーンと投げ込むことができるからです。神様は実に巧妙なわざをお考えになったものだと思います。
(2)間接的説教
腹話術は術者と人形と観客の、いわば“三角関係”で話が進むために、聖書片手の直接的なメッセージよりも、間接的になり、当たりがやわらかくなります。このことは、特にまだ信仰をもっていない人々にとっては、少しずつ福音に触れるための助けとなるでしょう。術者は直接人々に説教するのではなく、人形を相手に説教できますし、重いテーマや、なかなか口ではストレートに言いにくいテーマであっても、腹話術だと案外取り上げ易いのです。
(3)カウンセリング効果
これはかねてより強調していることですが、人形は観客の立場に立てるということが、大きなメリットです。人形が人々の心を代弁する形で、疑問、質問を術者にぶつけることができますし、術者は、人形に答える形で、人々に福音を解説することができるからです。時には、人形が突拍子もないことを口走っても、「人形の言うことだから」という雰囲気で、特に問題にはなりません。かえって、そのことで、人々の心がさらに開かれることもあるのです。このようにして、人形との会話を通して、人々の聖書(神様)に対する無知や偏見や誤解を解くこともできるでしょう。そうして、人々のつまずきを立て直すことができるのです。このような作業が霊の領域では行われており、その会話の中に聖霊が働いてくださる時、人々の魂は目に見えざるにいます神様(イエス様)に向けられていくのです。
けれども、ここで再確認しておきたいことは、人形の台詞が人々の霊性を左右する力があるということです。ですから、術者は、台本書きの段階から、観客の「霊的ニーズ」をよく考えることが必要です。この集会の人々はどのようなニーズがあるのか、どのレベルまで下がっていかなければならないのか、どんな疑問があって、どういう表現で答えたらわかりやすいか、最後には、どれくらいの理解をもってほしいか・・・等々、よくよく祈って備えておきたいものです。
2014年3月28日