No.53 生きた人形の動き③
- 術者が動くのはなく、人形が動く -
「私が命じられたとおりに預言すると、息が彼らの中に入った。そして彼らは生き返り、自分の足で立った。」
エゼキエル書37章10節
人形操作の研究の前に、大切なのは台本の研究であることは、前回学びました。そこで、今回は、みなさんが、すでに十分に台本を練り上げたことを前提に、いよいよ人形操作について考えてみましょう。もちろん、個性あふれる腹話術をめざすためには、台本も人形の動きも、型にはまりすぎるとおもしろくなくなりますが、何事も基本は重要です。そこで、完成した台本にどのように人形の動きをつけていくか、だいたいの流れを紹介します。(すべて、この順番でなければならないという意味ではありませんが、参考にしてください。)
台本の整理
- まず、書き終えた台本の台詞を読んで、フレージングを考えて、ラウンドを決めます。フレージングとは、内容のまとまりを示すもので、場面ごとに区切りをつけて、ラウンドの数字を入れると、話の展開が捉えやすく、暗記も表現もしやすくなります。(基本台本「イサクの誕生」を参照してください。)
- ラウンドごとに、場面の情景を思い描いてみましょう。登場人物を中心に、どんな出来事があり、どんな感情が込められているかなど、自分で味わってみます。
人形の動きの問題点
ここで、ト書きに入る前に、一般的に多く見られる人形操作の問題点を、幾つかあげておきたいと思います。みなさんは心当たりがありませんか。
- 人形がテーブルの上で座ったまま、ほとんど動かない。(特に、人形がしゃべらない時は、死んだ状態になっている)
- 人形が同じ方向ばかり向いて話す。(術者と内側に向き合ってばかりいる。人形の顔がいつも同じ角度になっているetc.)
- 術者が人形の片手しかもたない。(左手で、人形の左手をつかむ)
- 術者が台詞ばかり考えていて無表情になる。
- 術者が人形の後ろに立って隠れてしまう。
問題の解決法
では、「人形の動きの問題点」で挙げた問題点に対して、人形をどうすれば生き生きと動かせるかを考えてみましょう。
- 人形は、術者の手が入った時から、いのちが入ると考えて、何も言わなくても、常に小さく動かす。
- 術者も人形も、台詞を言っていない時も表情を作る。(しゃべらない時は、相手のことばに耳を傾けて、何かを考えたり、感じたりしているわけですから、何らかの反応が必要です)
- 人形の手足の動きやボディーの動きなど、テキスト『腹話術の基礎』p.15,16を参考にしながら、日頃から練習をして、いつでも応用できるようにしておきましょう。
- 術者と人形は、基本的に、並行して立ちますが、場面によっては、術者が前後左右に動いたり、人形もスタンドから離れたり、スケールの大きい動きを試みてください。
人形の動きのト書き
- 各台詞に、すべて動きを付ける必要はありません。
- 台詞に込められた人形の感情・意志を表わすような動きを簡潔にト書きします。
- 話のクライマックスに向かって、盛り上げていきます。(間、テンポ、リズム、声の強弱、活舌などに留意しましょう)
- 「動かない動き」も、効果があります。(黙って物を言う・・・「間」が大切)
- 術者と人形の動きの組み合わせが大切です。術者の顔の表情や身体の動き、人形との距離感などが、表現力をアップします。
以上のことは、“言うは易し、行うは難し”ですが、とにかく、 主のために、情熱をもって、取り組んでいきましょう。
2018年10月26日