No.68 他の分野から学ぶ③

-絵本を台本にする-

「まことに、あなたがたに言います。子どものように神の国を受け入れる者でなければ、決してそこに入ることはできません。」

マルコの福音書 10章15節

 これまで、腹話術は、演劇や漫才と色々な点で共通点があり、参考になることがあると学んできました。そこで、今回は、絵本をもとに腹話術台本を作るにはどういう点に留意したらよいのかを考えてみたいと思います。

みなさんの中には、「聖書台本から離れて、楽しい話から自由に書いてみましょう」というと、身近にある絵本や童話に心が向く人が多いと思います。童話ですと、基本的に文章中心ですから、聖書台本を書く要領でも取り組めると思いますが、絵本となると、そう簡単ではありません。なぜなのか、その理由を少しあげてみましょう。

絵本の特性

文章よりも、絵そのものに重点が置かれている

絵本とは、大人(親)が子どもに絵を見せながら読み聞かせをしてあげたり、文字が読めるようになった子どもが自分で読んで楽しむものです。もちろん、内容によっては、大人の絵本というのもありますが、この場合でも絵が重要な役割を果たします。

絵本の目的は、基本的には「人間の感受性に訴える」ものである

つまり、絵本は人間の知的な理解力に訴えるものではなく、感性に訴えかけるものなのです。ですから、最近では、より子どもに楽しんでもらうために「しかけ絵本」や「飛び出す絵本」なども作成されています。

絵本を腹話術台本にするむずかしさ

文章が短すぎる

幼い子ども向けの絵本ほど、文章は短く、しかも、同じことばの繰り返しだったりします。これを、腹話術にそのまま置き換えて、同じことばを繰り返すだけでは、あっという間に話は終わってしまいますし、いったい何を伝えたかったのか、まったくわからないということにもなります。

絵本が読者に訴えたいことは何かが説明されていない

絵本というものは、人それぞれに感じながら自由に読んでいればよいわけですが、腹話術にするには、術者がある程度“解釈”したもので話を構成しなければなりません。

絵本を腹話術台本にする時のコツ

ストーリーが比較的長くて、変化のある素材を選ぶ

腹話術はことばの世界ですから、大人向けの絵本でなくても、できるだけ物語性のあるものを選ぶと、物語台本としては作成しやすいでしょう。

絵本を解釈する

絵本を台詞だけの台本に書き直すためには、術者なりの“解釈”(必ずしも“教訓”とは限りません)が必要です。そのためには、観る方々に誤解されないように「これは、○○という絵本をもとに私が創作したお話です」というふうに、演じる前にあらかじめ前置きをしておいた方が無難でしょう。

人形の感受性を育てる

気に入った絵本を自分なりに“解釈”するためには、術者がストーリーをドラマチックに進め、人形がそれに対して大胆に反応する(感じたことを率直に表現する)スタイルも効果的でしょう。

原作に忠実に伝えるために

「絵本をできるだけ原作に忠実に」と思う時は、ひとりヘルパーさんを頼んで、隣で、絵本そのものを聴衆に見せてもらい、台詞もできるだけ本に忠実に語るという方法もあるでしょう。その場合も、人形が観客の一人として、感じたことを子どもらしく表現すれば、観ている子どもたちも共感できると思います。

このように、絵本と腹話術とは別世界のものですので、台本にするのは簡単ではありませんが、みなさんが大好きな絵本であれば、その感動をもって取り組むことができ、案外楽しい台本が出来上がるかもしれません。

2021年11月27日