No.74 証し台本の書き方 ③
人形の霊的状態を設定する
コリント人への手紙第一9章19節
何度も言うようですが、腹話術はひとりであって、ひとりではないという特殊な芸です。術者はひとりですが、隣には人形という別人格がいるからです。みなさんには、そのことをいつも自覚してほしいと思います。それは、台本を書く段階から、実演の時まで、一貫して重要なポイントです。
人形の果たす役割というのは、その人形がどういう「キャラクター」をもっているか、ということに尽きますが、今回は、特に「人形の霊的状態の設定」について考えてみましょう。
1. 腹話術師が陥りやすい人形との関わり
(1) 術者が一方的に語って、人形は時々相打ちをするだけになる。
(2) 人形は術者のことばに疑問も反論もせず、全面的に味方となる。
このようなことがおこるのは、人形の霊的状態の設定がしっかりできていないことが原因です。つまり、「人格」のない人形になってしまっているのです。これでは、術者は話しやすいかもしれませんが、人形を使う意味がなくなってしまいます。
2. 人形の霊的状態の設定―人形は別人格であることが前提
(1) 人形は、聖書の話も聞いていない、信仰に対して全く無知である。
(2) 教会学校で少し聖書物語に触れているが、知識はあやふやで、信仰もない。
(3) かなり、しっかりと福音を理解して、信仰をもっている。(この場合は、なぜそうなのか。家庭環境や信仰生活についての説明が必要。)
3. 人形の霊性を生かした救いの証し台本
(1) 人形が聖書や信仰に無知であるなら、術者は未信者にわかりやすいことばで、救いの体験を語る。その場合、人形が率直に疑問を投げかけたら、丁寧に説明し、人形がだんだん理解、納得できるような流れにする。そうすると、聴衆も理解しやすくなる。
(2) 人形の聖書知識が不十分であるなら、当然術者のことばに対して、とんちんかんな反応をするに違いない。それはかえって、聴衆も楽しむことができる。と同時に、術者のやさしい矯正によって、かえって証しの内容がはっきりしてくる。
(3) 人形の方が術者顔負けのしっかりした信仰をもっている場合、術者の救いの体験の不十分なところを指摘できる。この態度も聴衆にとっては痛快である。そのやりとりによって、術者が信仰の確信を得るという態度は、上から目線よりへりくだることになるので、観ていて好感をもてる。
(4) これは特別な設定であるが、私の『きららとメギーおばさんの星印』の場合のように、きららは明確に救われていて、メギーおばさんはまだ未信者である、という設定も可能である。その場合は、メギーおばさんの方がきららにいろんな質問をして、人はどうして神を信じるようになるのか、という点で話を展開していくことができる。
結論として、みなさんに覚えていただきたいことは、「腹話術は人形が主役だ」ということなのです。「人形の霊性や信仰理解を表す台詞によって、聴衆の人々(特に未信者……大人でも子どもでも)の心は左右されてしまいます。ですから、たとえ、人形の霊性が未熟な場合でも、「今日は、このひとつの真理だけはわかった!」と人形が新しい発見をして、少しでもイエスさまに近づくという形で話が終わるなら、聴衆のみなさんも、「なるほど」と思って主に一歩近づいていけるに違いありません。みなさんも、こんなことを頭に入れながら、もう一度、ご自分の救いの証しを見直してみてください。
2022年7月22日