No.91 人形を育てる

「イエスは神と人とにいつくしまれ、知恵が増し加わり、背丈も伸びていった。」

(ルカの福音書2章52節)

 最近は、ぬいぐるみに関して、おもしろい世界が繰り広げられているようです。過日「ぬいぐるみ病院」のニュースを見たと思ったら、今度は「ぬいぐるみ保育園」というニュースが目に留まりました。この場合は、ぬいぐるみが痛んでいるので直すという話ではありません。持ち主が朝、自分のぬいぐるみを“保育園”に預け、夕方受け取りに行きます。その間、“保育園の保母さんたち”は、他のぬいぐるみたちと、色んな活動をして遊ばせてくれるのです。本を読んだり、ゲームをしたり、昼食を食べて昼寝をして、お絵かきをして、おやつを食べて…もちろん、その度にそれ用の衣服に着替えさせたり道具を使います。そうして、夕方、持ち主が引き取りに来ると、ぬいぐるみと共に、一日の“活動報告”(写真と連絡帳)を渡すわけです。

 あまりの奇想天外な世界なので、あっけにとられましたが、ぬいぐるみを預ける側も、預かる方も、お互いに真剣なので、「これはどういうことか」と思わず考え込んでしまいました。そして、気づいたことのひとつは、「持ち主にとっては、ぬいぐるみはペットと同様に、家族の一員なのに違いない」ということでした。ですから、自分の子どものように、幼稚園にも学校にも行かせて、「育てたい」ということなのでしょう。自分が働きに出ている間、ひとりぼっちで留守番などさせたくないのです。

 そこで、ふっと思ったのは、みなさんのように、「ゴスペル腹話術師」を目指している方々にとっての人形は、それほどの愛を持って育てられているだろうか、ということでした。もちろん、みなさんも、みなさんなりに、ご自分のパペットを傍に置き、話しかけたり、抱っこしたり、奉仕の準備で会話はするでしょう。そして、たまには衣替えもすることでしょう。でも、やっぱり、奉仕や月例会での発表がないと、練習にも身が入らず、ケースの中にいれたままになることが多いのではないでしょうか。

 人形にいかに愛情を注ぐか、については、いわゆる腹話術人形とパペットとは、違いが出てくるのは否めませんが、それでも、もっともっと人形に色々な経験をさせても良いのではないでしょうか。

 私が昔、人形タカちゃんと一緒にやっていたことをご紹介しましょう。

  1. 一緒に語り合い、祈り合う。
  2. 洋服や和服を手製、既製品でそろえる。(季節により、奉仕の場によって着替える。タキシードや紋付き袴、帽子、手袋など小物も)
  3. 昼寝する時は、ゆかたに着替えさせて、一緒に寝る。
  4. 一緒に絵本を読む。
  5. 人形を膝の上にのせて、一緒にテレビを見る。
  6. ヘアーカットやメイクなどもやり直す。
  7. 腹話術仲間(ママ友)と会い、人形同士のおしゃべりをさせる。
  8. アメリカ人の集会に出席して、英語で交わる。
  9. 世界中の人形が集まっている博物館に入館させる。

 これらのうち、(1)~(6)の経験は、術者と人形の間ですから、互いの関係を密にするという意味で良いことであり、必要不可欠だと思います。けれども、人形の心の成長を促したり、社交性を身に着けさせるためには、(7)~(9)のように、外部の人たち(と、その人形たち)とも交わることが大きな糧になることでしょう。(すなわち、前述のぬいぐるみが保育園に行って、他のぬいぐるみと遊ぶという経験が大切であるように!)

 私たちは、腹話術師として、「腹話術は技術が必要だ」という考え方、捉え方にあまりにも縛られてきたのではないでしょうか。そのために、いつも、腹式呼吸、発声、リップコントロール、リップシンク、人形操作、等々の技術の訓練を重視し、―これらは、あまり楽しくないのですが―、その上、台本作りがむずかしいと頭をかかえていませんか。私自身、ゴスペル腹話術師は、イエスさまの愛の中で、人形と共に、楽しく成長していくことをめざしていけば良いのではなかろうか、としきりに思う此の頃なのです。

2024年3月22日