No.95 腹話術を習う適齢期

「すべてのことには定まった時期があり、天の下のすべての営みに時がある。」

(伝道者の書3章1節)

 みなさんは、何歳の頃、腹話術を習ったでしょうか。私は、神学校在学中の25歳でした。その時の先生(春風イチロー師匠)が、ある時こうおっしゃったのです。「腹話術を習うには若いほどいい。まあ、25歳までかな。」そこで私は「ああ、滑り込みセーフだ」と胸をなでおろしたものです。
 それから時は流れ、今度は、私が「腹話術を教えます」という立場になって、ある神学校のニュースレターに「70歳からでも学べます」と書いたところ、そこの校長先生から「80歳ではだめですか」という質問が届きました。私は驚いて、「そうですね。それまで声楽とか演劇とかで腹式呼吸を学んでいる人なら可能かもしれませんが」とお答えをしたものです。
 みなさんなら、どう答えられるでしょうか。「結婚前に習ってもね、結婚、出産、子育てが入ると中断したりするし、あまり高齢では、発声は大変だし、暗記力もなくなるし、むずかしいですね」というところでしょうか。
 実際、腹話術は何歳頃始めると上達するのか、などと考えると、これは個人差もありますので、正解はありません。そこで今回は、「何歳頃、どんな目的で始めると効果があるか」という観点で、共に考えてみたいと思います。

1.年齢の面から

(1)幼児の頃から親しむ。
 これは違う習い事の話ですが、ピアノはだいたい何歳からレッスンを始めると身に付きやすいかを考えると、3歳~5歳が多いようです。すなわち、幼児の時からです。何事も、最初は遊びながら、楽しむことから始めるのが良いでしょう。腹話術なら、パペットを抱いて、ひとりで話しかけるというところから始めると、「人形大好き」人間になります。細かい発声や打音などは、小学生になってからで十分です。
(2)親子で習う。
 昔、私の知り合いで、小学校高学年の娘さんと一緒に学んだお母さんがいました。家に帰ってもふたりで一緒に練習したらしく、そろって、メキメキ上達していきました。今では母娘とも指導的立場で活躍しているようです。
(3)独身時代に習う。
 10代~20代の独身時代というのは、技術を習得するには、大変よいタイミングだと思います。暗記力もあり、発想も柔軟で、自分らしい世界を創作することができます。この時代に走りこんでおけば、その後、結婚・子育てで一時的に中断しても、すぐに復帰できるでしょう。
(4)退職後に習う。
 現代は仕事を退職しても、それからが長いという時代です。まさに“70の手習い”が可能ですから、マイペースで楽しみながら学んでいったらよいと思います。私が教えた最年長者は80歳でした。50代の娘さんと一緒に学び、2年間聖書台本で奉仕し、83歳で天に召されました。ハレルヤ!

2.目的の面から

 腹話術は「人の前で演じてなんぼ」の世界ですが、まずは「なぜ腹話術を習うのか」という目的が明確だと、それに向かって励むことができます。
(1)自己表現をしたい。…人の前に立って話すのが大の苦手だったのに、人形と会話ができるようになって変えられた、という人がいます。
(2)ボランティアをしたい。…かわいい人形を用いて、子どもたちを楽しませたい。孤独な高齢者を励ましたい。というような、ボランティア精神のある人は、その目的を達成するために、練習も苦にならないことでしょう。
(3)主の愛を証しし、伝道したい。…習う前から、これほど高尚な目的意識をもつ人がいるかどうかはわかりませんが、「もし主が許されるなら」という気持ちで祈りつつ取り組めば、主は必ずや祝福して、証しの場も備えてくださることでしょう。
 何事も、背後には私たちを造られた神さまの定めた「時」があるのです。

2024年7月26日