No.97 心の燃える腹話術

「二人は話し合った。『道々お話くださる間、私たちに聖書を解き明かしてくださる間、私たちの心は内で燃えていたではないか。』」

(ルカの福音書24章32節)

 私の個人的経験ですが、かつて腹話術伝道集会(大人)に招かれた時、集会直前にある信徒の方に「今日は、さぞかしおもしろいお話をしてくださるのでしょうね」と言われて、内心いやな思いになったことがありました。その時の私は「腹話術だからって、ゲラゲラ人を笑わせる話をするわけがないじゃない。私は真面目に福音を語るのだから」と言う風に、堅苦しく受け取ってしまったからです。
 けれども、此の頃は、大分捉え方が変わってきました。もし「伝道メッセージなのだから、腹話術であろうとおもしろいわけがない」としたら、それでは腹話術を使う意味がなくなるということに気が付いたからです。
 「腹話術を使うからおもしろくなる」のでなければ、どうして腹話術を使う必要があるでしょうか。ひたすら真面目に、真剣に語りたいなら、腹話術は使わないでストレートメッセージをすれば良いわけです。
 要するに、この場合の「おもしろい」とは、どういう意味かが問題なのです。聴衆のみなさんは、けっして落語や漫才のようにゲラゲラ笑わしてくれるはず、ということまで期待していないでしょう。少なくとも、人形とふたりで話すのだから、「興味深く、楽しい」演技を見せてくれるだろうという期待なのだと思います。実際のところ、どんな話であれ「腹話術なのにおもしろくも何ともない」なら、それはもはや腹話術ではありません。やはり、「腹話術はおもしろい」ものでなければその意味をなさないものです。さらに一押しして「心燃やされる」話であれば、望外のおもしろさです。そこで今回は、「おもしろい腹話術」をめざすポイントについて考えてみましょう。

1.総論:人の心を動かす話
 昔、デール・カーネギーと言う人の「スピーチ」の本を読んだことがありますが、確か、こんなポイントをあげていたと思います。
(1)情熱:話す人自身が、語るテーマについて、情熱をもっていること。
(2)資格:話す人が、自分で研究したり体験したりして、そのテーマについて話すのに適任であると認められること。
(3)有益:話を聞いた人々にとって「今日は、役に立つ話を聞けて良かった」と思える有益なテーマであること。
 どうでしょうか。私たちにも大いに参考になると思えませんか。

2.聖書台本や証し台本の場合
(1)論理性:聴衆にとって、聞いていて、話の順序が分かりにくかったり、論理的でなかったりすると、話についていけません。話の筋が簡潔で、聞きやすいものにしましょう。
(2)クライマックス(山場):聖書台本の場合、特に物語性が強い箇所だと、どうしても「あらすじ」になりがちです。また、証し台本の場合は、「説明調」になりやすいものです。聴衆にとって、そういう展開は実に退屈です。なので、「この話はここが最も重要です!」とはっきりわかるように、術者は心を込めて、その場面を盛り上げる工夫をしましょう。
(3)メッセージ性:聖書台本はもちろん中心聖句を明確にすること。証し台本でも、どんな聖句を体験したのかが明確であることが大切です。みことばに聖霊が働く時、その話は生きたものになり、聴衆の魂に届くからです。

3.絵本その他の題材の場合
(1)登場人物:何人も登場する場合、主人公を選び、その物語を自分なりに整理し、解釈して(肉付け)話を再構成するとおもしろくなります。
(2)意外性:なるべく聴衆にとってめずらしい題材を選ぶなら、意外な展開に興味を持てるでしょう。
(3)余韻:話の後で「心に染みた」「感動した」という反応があるなら、それは、余韻のある話であり、メッセージ性を持っていることになります。

2024年9月27日