No.98 絵本を台本にする ―『靴屋のマルチン』から―
(マタイの福音書25章40節)
今年もクリスマスが近くなりました。腹話術の奉仕を依頼されているけれど、聖書のクリスマスストーリーはもう演じてしまったというみなさんへ。クリスマスにふさわしく愛に満ちた絵本をもとに、台本を作ってみてはどうでしょうか。今回は、有名な『靴屋のマルチン』をどのように腹話術台本にしたらよいか、共に考えてみましょう。(来年以降の参考にでも。)
始めに:いつも語ってきたように、絵本と腹話術は全く別物です。絵本は、絵と文章の両方があってこそ物語が理解できるようになっていますが、腹話術は、あくまでも術者と人形の掛け合いですから、話の流れは、台詞を聞きながら想像するしかありません。その点をよく心得て、絵本を再構成する形で腹話術台本を作成する必要があります。
「そんなにめんどうなら、やっぱりやめようか」と思わないでください。絵本でよく読まれている話というのは、原作に魅力があるからです。ということは、腹話術で表現しても人々にその話の魅力は伝わるはずなのです。以下、その作業のステップを簡単にまとめてみたいと思います。
1.最初の感動を大切にする。
みなさんは『靴屋のマルチン』の話のどこが好きですか?マルチンのどんな言動に惹かれましたか?それとも、彼の心を変えてくださったみことばの力でしょうか?まずは、じっくり黙想してみましょう。
2.何冊かの絵本を読み比べる。
同じ絵本でも、作者や出版社によって、違った味わいを出していることがあります。図書館にでも出かけて、何冊か読み比べ、味わってみましょう。
3.原作を読む。
『靴屋のマルチン』は、ロシアの文豪レフ・トルストイによる民話『愛あるところに神あり』の別名です。まずは、この話の原作を文章で詳しく読み、絵本でははぶいている点まで味わいましょう。ついでに、なぜトルストイがこのような民話を書くようになったか、彼の生涯なども調べてみましょう。作品の深みに触れることができるでしょう。
4.登場人物を整理する。
いよいよ、腹話術台本に移行するための準備です。原作では、たくさんの人たちが名前入りで登場しますが、そのうち、どの人物、台詞などを取り上げるか、台本の長さや演じる対象なども考えながら、取捨選択していきましょう。
5.台本の流れを考える。
(1)術者と人形の役割分担を決めます。人形がこの話を知っているかどうかによって、どう反応するかも違ってきます。
(2)話のクライマックスをどうもっていくか、構成を考えましょう。ただ漫然と出来事の順番を羅列したのでは、退屈になります。
(3)この話のモチーフとなっている聖句(マタイ25:40)をどこにもってくるか、それによって、一番伝えたいことの重さが違ってきます。
(4)話の最後はどう締めくくるかを考えます。クリスマスであるなら、どのように話のテーマと関連づけるかが大切です。
6.適用を考える。
この物語をどこで演じるかにもよりますが、メッセージ性をもたせたいなら、何らかの「適用」が必要でしょう。現実生活に照らして、学ぶべきことを簡潔に示唆できたら、聴衆の魂にも響くことでしょう。ただし、話の最後に「だから、だから」とお説教調のことばを並べないように気をつけてください。むしろ、話の途中で、さりげなく“共感”という形で、組み込むことの方が自然かもしれません。
2024年11月22日