No.96 後継者養成の祈り

「収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、ご自分の収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。」

(ルカの福音書10章2節)

 腹話術というものは、いつの時代にもマイナーな芸ではありますが、それでもかつては大変用いられたものでした。特に「ゴスペル腹話術」について考えてみますと、私が学んだ40~50年前は、日本中の教会学校に子どもたちがたくさん集まり、「腹話術子ども会」には、小学生が少なくても50~100名、多くて1,000名を超えるようなこともありました。当時は、子どもにとっての娯楽が少なく、お互いに群れをなして遊んでいたので、集まりやすかったのでしょう。また、現代のように学習塾や習い事もさほど盛んではなかったからかもしれません。
 そんな時代でしたから、腹話術を習うクリスチャンも大変多かったのです。私は、最初から“腹話術でみことばを伝える”ことをめざしておりましたので、特にアメリカから帰ってからは、「ゴスペル腹話術初心者講習会」たるものを、あちこちで開き、多い時には、一度に20名ほどが集まり、全力投球で指導してきました。
 ところが、その兆候は、じわりじわりと先細りして、10年も経つと数人にまで落ち込んできたのです。ちょうどその頃、私自身が声帯を痛め、現役を引退せざるを得なくなりましたので、その影響もあったかと思いますが、5年後に講師として復帰してからも、減少傾向は止まらず、とうとう最近では、受講生は1年にひとりもいなかったという年もあるほどです。
 もちろん、未信者の世界では、それなりに楽しんで集っているらしいのですが、こと「ゴスペル腹話術」となると、本当に少なくなりました。そこで、今回は、その原因を祈りつつ分析してみようと思います。

(1)教会学校に子どもたちが集まらなくなった。
 少子高齢化の波は日本の諸教会も同様で、そもそも若い世代のクリスチャンホームが少なくなりましたので、その子弟もおりません。今や、「教会学校をやっていません」という教会も多く、やっていても、ひとりかふたりというケースもあります。
 そうすると、信徒の方々も高齢の上、「子どもがいないのでは、腹話術を習っても演技する機会がない」と考えてしまうのでしょう。確かに、腹話術は子どもに見せるものと考えるなら、習う人は激減してしまいます。
(2)啓蒙活動が不足している。
 腹話術は、幼子から高齢者まで、全年齢層に福音を伝える手段として有効です。また、腹話術を習得できる人の年齢層も、(前回確認したように、)子どもから年長者まで幅広く可能なのです。それらのことを、多くのクリスチャンがまだ知りません。
 このことについては、私自身大いに責任を感じるところです。これまでのステージの演技をホームページのYouTubeでアップしていますが、目下、講師としての働きに収まってしまい、腹話術の効用などを諸教会でアピールすることもできておりません。とはいえ、こればかりは、諸教会で実際に腹話術を演じながらでないと説得力がありませんので、なんとしても「ゴスペル腹話術クラブ」のみなさんに、直接発信していただきたいところです。
(3)若い献身者が少ない。
 「ゴスペル腹話術師」が誕生するためには、まずその人に腹話術を習って福音を伝えたいというパッションがなくては話になりません。主を愛し、腹話術を愛している人だけが「ゴスペル腹話術師」になる資質をもっていると言えるでしょう。けれども、こればかりは、人間の説得や努力では通用しません。主がその人に召命と賜物を与えているか、にかかっているのです。
 特に、最近は若い方々で献身する人が少なくなったと聞いています。どこの神学校も生徒数が減少しています。そんな中から、さらに腹話術伝道の重荷をもつ人が現れるのはまさに奇跡的とも言えるでしょう。ですから、祈りが必要なのです。特に私たちの後継者となるべき次世代の方々を主が起こしてくださるように、必死に祈ろうではありませんか。

2024年8月23日