No.67 他の分野から学ぶ②
-漫才の面白さ-
「二人は一人よりもまさっている。二人の労苦には、良い報いがあるからだ。」
伝道者の書4章9節
前回はテレビの「朝ドラ」でしたが、今回は、「笑点」を取り上げたいと思います。「笑点」では、毎回、大喜利の前に演芸の時間があり、色々な芸人さんが登場します。一番多いのが漫才、その他、漫談、落語、講談、マジックなど様々です。日曜午後、もし時間があったら、是非見て、楽しみながら、研究をされたらいいと思います。そこで、今日は、腹話術に最も似た要素をもっている漫才について考えてみましょう。
衣装と風貌
演芸というのは、まず芸人が舞台のそでからマイクの位置までどのように登場するかで、第一印象が決まります。観客が一番注目するのは、どんな顔や声の人たちで、どんな衣装を着て、どんな格好(髪型など)で出てくるか、ということです。やはり、芸人である以上、舞台衣装と髪型などは重要なのです。その全体の姿を見て、今日の話の内容を想像したりします。この点は、腹話術も同様でしょう。話の内容によって、術者や人形の衣装を変える、ということは案外重要なことなのです。
小道具
昔は漫才といえば、ただ二人だけがトークの面白さで観客を笑わせることが多かったようですが、最近は、小道具を使うケースが目立ちます。演出の仕方がどちらかというと演劇風にアレンジされてきたのでしょうか。それによって話が立体的になったりする効果もあるのでしょう。ただし、シンプルに会話だけで勝負するという漫才も失われて欲しくないものです。腹話術の場合も、小さな小道具を使うことは、視聴覚教材を使って話すように、内容が具体的になってわかりやすいという面もあります。ただ、その場合には、必要最小限に抑えておいた方がよいでしょう。
ネタの奇抜性
漫才の話のテーマやネタですが、普通は最近の世の中を風刺するものを選ぶと観客に受ける、という考えもありますが、かえって思いもかけない奇想天外なネタで、観客の興味を引き付けるという場合も多いようです。彼らは何としても観客を笑わせたいのですから、その点は日々研究していることでしょう。腹話術の場合も、聖書台本ではない話では、多くの人がよく知っている内容ではなく、ほとんど知らない珍しい話を探し出して、そのおもしろさや楽しさを伝えられたら、観客が集中して聞いてくれると思います。
ボケとツッコミ
漫才の面白さは、やはり二人の演技者が全く対照的なキャラクターを演じることでしょう。典型的には、ボケとツッコミで、笑いをとることが多いですが、そのパターンがいかにユニークであるかは勝負所です。その点、腹話術は実質は一人芸ですから、人形がいかに術者のキャラと対照的なキャラを演じられるかが課題になるでしょう。とかく、術者が教える(話をリードする)側になり、人形が返事をする(受け身になる)ことが多くなりがちなので、お互いにボケとツッコミを明確にする努力は必要です。
「間」と「台詞の言い回し」
漫才師の台詞がなぜ面白いか、それは多くの場合「間」と「台詞の言い回し」がうまいところからきます。同じ台詞でも「間」を間違えると、面白くもなんともありません。彼らはその「間」や「台詞の言い回し」の研究のために、陰で猛烈な練習をしているのです。私たちは、腹話術の台本を暗記することだけに気が向いてしまって、いかに、「間」や声の抑揚、リズムなどによって台詞を生かすか、という研究が不十分だと思いませんか。
表情・身振り・手振り
漫才師は台詞の言い回しだけでなく、どんな表情と態度でそれを語るかに気をつけています。彼らの顔の表現力は抜群です。また時には、二人して舞台を動き回ることもあります。腹話術では、特に顔の表情と手の使い方を研究しましょう。スタンドを離れて動くことも効果があるかもしれません。
2021年10月29日