No.77 豊かな表現力をめざして ①
顔の表情を工夫しよう
テサロニケ人への手紙第一5章16節
私たち人間には、様々な感情があり、それに伴って、実に豊かな表情を見せるものです。ところが、私たちはそれがあまりにも日常的で自然なことなので、つい忘れてしまいがちです。それで、いざ腹話術で演じるだんになると、笑うことひとつとっても、非常にぎこちなくなってしまうのです。でも、それでは、せっかく良い台本を書けたとしても、表現力不足で、内容が観客に伝わらないということになりかねません。そこで、今回からしばらく、豊かな表現力をつけるにはどうしたらよいか、考えたいと思います。
まずは、一番目立つという意味で、「顔の表情」をとりあげてみました。
1.顔が無表情になる原因
ここで「顔」とは、人形ではなく、「術者の顔」です。腹話術をしている時に、つい無表情になってしまうのはなぜでしょう。
(1) リップコントロールが必要
もちろん、腹話術の技術でとても大切なことは、唇を動かさないで人形の声を出すことです。そこに集中すると、リップコントロールが良い人ほど、顔の下半分は、唇を抑えるために、“笑う”ことができません。いわば“能面”のようになってしまいます。そんな時は、頬から上の部分で“笑顔”を作りましょう。「目」が笑っていることや、「目線」をあちこち動かすことによって、表情の変化をつけることもできます。
(2) 台詞を頭の中で考えている時
みなさんは、演じている間に、頭の中でいつも「次の台詞はなんだっけ」
と考えていませんか?そうすると、当然顔の表情のことを考える余裕は出て
きません。台本は完成したら、必ず暗記しましょう。そして、暗記したら忘れることです。忘れていれば、人形の台詞は初めて聞いたように反応することができます。台本作りには完成はありませんが、いつまでも未完成なままで、台本を見ながら演じる癖はつけないようにしましょう。
(3) 話の内容を楽しんでいない時
みなさんは、「この話はおもしろい」「この話は感動した」「これはどうしても伝えたい」と思って台本を書いていますか?そもそも術者が話の内容に感動していなければ、喜びをもって演じることはできません。心から楽しんで演じられる話を台本にしましょう。それが顔に出るからです。
2. 顔の表情の工夫
(1) 大げさにしゃべる。
みなさんが人形を抱いたら、すでに普通の人ではありません。“腹話
術師”として演じる世界に入ったのです。ですから、普段の会話のように、あまり唇を動かさない状態でしゃべってはいけません。“演じる”時は、わざと大げさに表現します。精いっぱい大きな口を開けて、顔中の筋肉を動かして台詞をしゃべってみましょう。眉、目、鼻、口、すべてを使って、喜怒哀楽を表すのです。鏡を使って練習してみてください。
(2) 片方の手を活用する。
人形の頭に差し込んでいない片方の手は、とても大切です。顔だけを動かすのではなく、そこに左手(あるいは右手)が加わると、あらゆる表情が表現できます。自分の頭に手を置く、目をふさぐ、頬に触る、腕を広げる、等々、顔と共に手を動かすと、何を言いたいかが台詞と共に生き生きと伝わってきます。
(3) 人形との距離感
時々、人形をテーブルの上に座らせて、自分も全く動かないで、台詞だけしゃべる術者がいますが、これでは何も表現できません。話の内容によっては、人形に近づいたり、抱いたり、人形の方が術者に寄りかかったりして会話をすると、そこに動きが出て、同時に顔も体も動いてくるものです。顔を動かすとは、顔だけではなく、体全体も連動するということだからです。
2022年10月28日